水虫と爪水虫 薬の治療で大切なこと
水虫・爪水虫のわが足を見て、ひそかにため息をついている方も多いことでしょう。
水虫はいまや国内患者数が約2,500万人、すなわち国民のおよそ「5人に1人は水虫持ち」ということになります。
水虫は、「白癬菌(はくせんきん、カビの一種)による感染症」を指します(白癬(Wikipedia)ご参照)。
白癬菌が爪の中まで進入してくると、水虫のなかでも最も治りにくい、爪水虫となります。
足の裏や爪の中などは、湿度がものすごく高くなりやすいため(なにせ、汗をかいた足を革靴と靴下で二重に閉じ込めているんですから、当然ですね)、白癬菌にとって自らが繁殖するには、最高の環境となっているわけです。
この水虫、足や爪だけでなく、股間(インキンタムシ)や頭部(シラクモ)、身体の一部(ゼニタムシ)にもできます。
ちなみに、かゆくなるのが水虫だと思われているかもしれませんが、たとえかゆくても、必ずしも水虫とは限りません(ほかの皮膚病かもしれません)。
まったく自覚症状のない水虫のほうが、事例としてはむしろ多いくらいです。
水虫・爪水虫の発症は、性別も関係ありません。
女性向けの水虫治療薬が販売され売れ行きを伸ばしている現状からして、ひそかに爪水虫に悩んでいるという女性もきっと少なくないことでしょう。
この水虫・爪水虫、自然に治癒するということはありません。
特に爪水虫は、白癬菌が爪の奥深くまで進入していること、そして硬くて丈夫な爪の中に薬が吸収されにくいことから、爪の表面に市販薬を塗るだけで治すことはまず無理とされています。
通常は、「飲み薬ないし、飲み薬と塗り薬の併用」で対応することになります。
そしてこれが、水虫を撃退するのにもっとも効果的な「治療の王道」となります。
ただし治療の主役は、あくまでも飲み薬です。
内服薬に塗り薬を付けてくれる病院もありますが、これまでの塗り薬の効き目は今ひとつといったところです(これまで爪水虫の塗り薬がすべて保険の適用外であったことも、その証左と言えそうです)。
水虫の市販薬・大衆薬は「第2類医薬品」に分類されますが、殺菌効果の高い成分「塩酸ブテナフィン」や「テルビナフィン塩酸塩」を配合した塗り薬が主流で、近年は製品の種類も増えています。
通常の軽い水虫ならばこれらの市販薬を一日1回、患部およびその周辺にも広範囲に塗り続けることによって、1~2週間もすれば、たしかに自覚症状は治まってくるでしょう。
ただし、ここからがポイント。
宣伝が盛んな市販の塗り薬でこっそり済ませたり、特効薬や民間療法探しに時間をかける前に、何よりもまず皮膚科を訪れて「水虫かどうかを特定してもらう」ことが先決となります。
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というのも、水虫だと思って皮膚科を訪れて検査してみると実は水虫ではなかった…というケースは、決して珍しくないのです。
水虫と思って皮膚科を訪れる方のおよそ3人に1人は、水虫以外の疾患、と言う皮膚科の先生もいるくらいです。
水虫の原因となる白鮮菌と一見非常によく似た症状を示す「皮膚カンジタ症」や「異汗性湿疹(汗疱)」などの皮膚病がありますが、実はこれらは水虫と全く別モノです。
「皮膚カンジタ症」などは、真菌(かび)による点では同じですが、菌の種類が異なっており水虫ではありません。
またとりわけ高齢者に多い「厚硬爪甲(こうこうそうこう)」といわれる、爪がぶ厚くなる症状は、爪水虫と最も間違いやすいとされます。
水虫と勘違いしたまま長期にわたって内服薬を服用していたために、肝機能障害を起こした事例などもあるので、まずは「水虫かどうかという症状の特定」が必要になるわけです。
実は水虫かそうでないかの見分け方は、プロである皮膚科の医者でも難しいところがあり、肉眼だけでの区別では専門家ですら見誤ることもあるそうです。
したがって通常、皮膚科では該当箇所の皮膚の一部を顕微鏡などで検査し、総合的に判断して水虫か否かの結論をだします。
まして素人が見た目で水虫かどうかを判断するのは、ほとんど不可能と言ってよいでしょう。
もうひとつ、水虫だけでなく他の皮膚細菌の感染症や皮膚炎を併発し、合併症を起こしている場合があります。
合併症の場合は市販の水虫薬だけでは対応しきれないため、素人判断ではこの点からも対応を誤るリスクが増すことになります。
また意外に思われるかもしれませんが、実は「糖尿病患者は、水虫・爪水虫になりやすい」のです。
糖尿病によって体の免疫力が低下しているため、足の代表的な感染症である水虫に狙われやすいためです。
糖尿病患者の場合、水虫にとどまらず二次感染により壊疽(えそ)が重症化する可能性もあるため、この点においても医師の診察を受ける必要があるわけです。
(なお糖尿病については、関連サイト「糖尿病 3分で知る症状と全体像~治療・食事・予防」をご参照ください。)
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上述のようにやっかいな水虫・爪水虫ですが、私たちにとっての朗報は、いまや「水虫は治療によって完治できる時代」だということです。
ほんの数十年前は、「水虫は治らない、一生つきあう病気だ」と信じている方がたくさんいましたし、いまですら、そう誤解している方がまだ多くいます。
爪水虫は、抗真菌薬の飲み薬を内服することが基本です。
飲み薬は市販されていないので、皮膚科医による処方が必要になります。
現在、病院で主に処方される水虫の飲み薬は「ラミシール」(有効成分名 塩酸テルビナフィン)と、「イトリゾール」(有効成分名 イトラコナゾール)の2つです。この2つの薬は効果に大差はありませんが、その飲み方に大きな違いがあります。
塩酸テルビナフィンは毎日1日1錠で約6ヶ月間続け、一方イトラコナゾールは1日8錠を朝夕食に分けて1週間飲み続けた後3週間休薬するという、やや変則的なサイクル(「パルス療法」と呼ばれます)を3周繰り返します。
なお塩酸テルビナフィンは肝機能障害の副作用リスクがあるため、最初の2ヶ月は月に1回血液検査が行われます。
言いかえると、肝機能に何らかの障害を有する方はこの内服薬が使えないので、最初の診察でまず血液検査を行った上で治療の可否が判断され、使用開始後も肝機能数値の経過を観察されます。
たとえば妊婦さんなどは副作用リスクを考えると、飲み薬の使用を躊躇されるかもしれませんね。
しかし2014年9月に、爪水虫専用の塗り薬「クレナフィン」が発売されました。クレナフィンは国内で初めての、「保険が適用される爪白癬治療剤」となります。
ちなみにクレナフィンの登場前の塗り薬は、飲み薬にもある「ラミシール」の外用液が一般的でした(なおラミシールは、塗り薬と飲み薬との併用が認められていません)。
クレナフィンの登場は飲み薬が服用できない患者にとっての朗報ですが、現在は費用面で多少高めにつくデメリットもあり、その普及にはまだ時間がかかりそうです。
飲み薬は爪と皮膚に浸透し、特に爪において塗り薬では届かない爪下と根元の両方から浸透するため、「一年後にはおよそ8割の患者が治る」といわれます。
個人差はありますが、治療期間(すなわち通院期間)として、6~10ヶ月程度は見ておく必要があるでしょう。
爪水虫などはデータ上100%完治するとまでなっていませんが、それでも大部分の場合治っているわけですから、長期の治療にはげむ価値は十分にあるのではないでしょうか。
水虫治療における最大のポイントは、ここにあります。
つまり、「完治するまでは、絶対に途中で治療を投げ出さないこと」です。
完治するまでに一年と言っても、特に忙しい会社勤めの方などにとっては、治療を続けること自体容易なことではありません。
数ヶ月すると仕事が忙しくなって、通院や薬を取りにいくのをさぼりがちになり、いつのまにか元の木阿弥…というケースが、現実に非常に多くあります。
特に爪水虫は、爪の生え替わりがないと完治しませんので、どうしても長期戦を覚悟する必要があります。
「治るまでは絶対に治療を続けるという意思」が、完治のための最大の関門といっていいでしょう。
最後に、ほぼ完治に至るまでの病院での治療費がどれくらいになるかについても、確認しておきましょう。
保険が適用される(自己負担3割)とすると、皮膚科に半年間通院したときの治療費はいかほどでしょうか。診察料と処方せん料・血液検査料・調剤薬局での薬代をあわせると、合計で2.5~3万円といったところです。
治療費が高いか安いかは見方にもよりますが、市販薬で水虫の塗り薬を買うと一本1,500~2,000円程度かかること、半年程度の期間と3万円前後の費用で長年の水虫の悩みから解放されることを考えあわせれば、有意義な出費と言えるのではないでしょうか。
ちなみに水虫薬の「ジェネリック」も何種類か出ているので、医師および調剤薬局にその利用を申し出ることで、薬代も少し安く済ませることもできます。
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薬を飲み続けることで胃腸障害や肝機能障害などの副作用がでる恐れもあるため、内服薬は、事前に血液検査などを行ったうえで処方されます。
とくに内服薬では、前述した「パルス療法」のような変則的な処方もありますので、服用間隔の指定もきちんと守ることが大切です。
また広く知られた話ですが、水虫の白癬菌は家のスリッパや浴室の足拭きマットを介してうつる可能性があります。
家族の水虫の足から剥げ落ちた皮膚を踏んだまま、いつのまにか家族に感染してしまった…ということのないよう、会社から家に帰ったら、とくに汗をかきやすい夏場はちゃんとお風呂場で足を洗うようにしたいものです。
家族が共用するスリッパやサンダル・足拭きマットなども、なるべくこまめに洗って取り替えましょう(ちなみに洗濯物は水虫の人がはいた靴下などと一緒に洗っても大丈夫です)。
家族に水虫をうつさないよう、またせっかく治った水虫が再発することのないよう、「水虫予防」という考え方を、ぜひ家族で共有したいものです。
最後に水虫・爪水虫治療のポイントを、もう一度まとめておきますね。
治療には1年やそこらはかかるが、水虫・爪水虫は治る病気。
今日は疲れたから…といって、そのまま寝てしまわないこと!
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